この講習は、富山市自殺予防対策事業として富山市保健所保険予防課さんから(公社)富山県鍼灸マッサージ師会に開催の要請があり実現した講習でした。
過去には、理容師・美容師の方や柔道整復師(接骨院)向けにも開催されているそうです。
講習の内容は、県内の自殺者の状況の推移などのお話から本事業の概要と意義の説明があり、その後精神科のお医者さんからメンタルヘルスの基礎、臨床心理士さんから実際の相談の受け方のテクニック的なお話がありました。
前半は、呉陽病院理事長 精神科医 小林寿夫先生による「メンタルヘルスの基礎知識」の講習でした。
精神悉皆の分類、精神保健福祉法で対象にとされている精神障害などの解説から始まり、うつ病・気分障害(双極性障害等)の解説、自殺者の推移(全国・富山)、原因・動機別の自殺者数の推移、危険な傾向や気をつけるべき要因、相談をすべき専門医についてや治療を受けるときのポイント、望ましい対処・望ましくない対処などを50分程度かけて講義されました。
過去にも何度かうつ病をテーマとした講習会を(公社)富山県鍼灸マッサージ師会では行ってきていますので、うつ病とは?という基礎知識については耳慣れた内容が多かったです。
良い復習になったと思います。
一般の方もちょっと覚えておくと良いかと思ったのは、うつや気分障害を扱われる専門医の科目だと思います。つまり、うつや気分障害が疑われる場合は、どの専門科目の病院を受診すればいいか?という事です。
これは、
精神科
神経科
心療内科
メンタルクリニック
を標榜している病院にかかる事が奨められましたが、一つ間違いやすい科目に“神経内科”が挙げられていました。
“神経科”と“心療内科”はこころのケアをされるお医者さんですが、似た響きの“神経内科”さんは、脳や脊髄、神経の病気を専門にみる科目で、病名で言うならパーキンソン病などの際にかかる科目だそうです。
うっかりすると勘違いしてしまいそうなので気をつけましょう。
後半は、北陸内観研究所所長 臨床心理士 長島美稚子先生による「相談の受け方と傾聴法、ストレス対処について」の講義で、二人一組になってのロールプレイも実施されました。
簡単に言えば、自殺に向かってしまいそうなお悩みを抱えていたり、強い孤独感を感じていたりする方とのお話の仕方、お話の聴き方の注意点と実際にどのように会話を進めることが望ましいか?という事の体験です。
ロールプレイでは、望ましくないシナリオと、望ましいシナリオの2つを実際に行ってみて、どのような気持ちになるか実体験してみました。
鍼灸師は、日常的に患者さんとお話しする機会も多く、多くの先生は経験的に傾聴の姿勢ができている方も多いんですが、そこは人間ですので、うっかりすると会話に夢中になり、ついつい自分語りを始めてしまったり…という事もありますので、その点を反省するには良い機会だったと思います。
過去のブログ記事でも書きましたが、鍼灸師は国家資格を定めている法律で“守秘義務”が課せられています。
これは公務員、弁護士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護士などにも課せられているもので、業務上知り得た秘密を漏らしてはいけないということで法律に明記されて決められています。
鍼灸師も国家資格者ですので、医師や弁護士同様に守秘義務があるんです。
鍼灸院は安心して話せる場所。
http://kotetu.sblo.jp/article/179821891.html
心の緊張やトラウマは身体の緊張として出てくることもあるようで、経験的なお話で申し訳ありませんが、お身体の緊張を緩めて行こうと施術をしていくと、ふとした時に堰を切ったようにご家族のお悩みや今のお辛い気持ちをお話して頂ける瞬間があったりします。
心理学を勉強されている患者さんは「心のトラウマが身体の緊張として残っているんだなぁ」と仰っていました。そういう辛い気持ちから身体が生んでしまったコリ感や緊張を、身体からのアプローチで緩めて行くと、その緊張を作ってしまった心の負担にもアクセスしてしまうことがあるのかも知れません。
鍼灸院も接骨院も色々な業態がありますので、中にはたくさんの患者さんとカーテン一枚隔てて一緒の空間で過ごす環境の場合もありますので、その場合はなかなか人の耳が気になって話せなかったり、先生が忙しく動き回っていて話す機会が得られなかったりという事もあるかも知れません。
当院の場合は、ほぼ完全予約制で、治療もお一人につきっきりで行いますので、他の患者さんとは顔を合わせる機会さえもほとんどありません。
何を話しても大声を出しても誰の迷惑にもなりませんので、安心してご来院・ご相談下さい。
今回の講習受講を契機に、“富山市メンタルヘルス協力店”として登録させて頂きました。
玄関に以下のステッカーが貼られている店舗さんがメンタルヘルス協力店になります。

富山市内の鍼灸院にもこのステッカーを貼り出されたところが何件か出てくると思いますが、皆さん今回のゲートキーパー養成講習を受講されている先生ですので、安心して受診して下さい。
当院でも、今回の講習を機会に、改めて気をつけて行きたいと思います。
【ゲートキーパー養成研修会】
日時:平成30年3月4日(日)13時30分〜15時45分
場所:(公社)富山県鍼灸マッサージ師会会館 3階ホール
演題:「メンタルヘルスの基礎知識」
講師:呉陽病院理事長 精神科医 小林寿夫先生
演題:「相談の受け方と傾聴法、ストレス対処について」
講師:北陸内観研究所所長 臨床心理士 長島美稚子先生